日本財団 図書館


 

を添加した場合に、実験用タンク(メソコズム)内の植物プランクトンのバイオマスと細胞数がおよそ5倍増大し(図24)、プランクトンの組成にも変化が見られるなど興味深い結果を得ている。最近はMARICULTの一環として、同じくメソコズムを利用しながら、ケイ酸など栄養塩の添加によるプランクトンの群集構造の変化に関する基礎的な実験を始めておられる。ケイ酸濃度がある閾値を越えればベン毛藻類よりもケイ藻類が卓越するようになることが分かってきている(図25)。
一方、海洋学科のFoldvik教授は、日本における深層水の利用技術に以前から興味を持っておられたが、コストやエネルギー利用の面で実用化は困難ということで、現在はむしろ淡水をフィヨルドの下層に注入することによって下層水を人工的に浮上させ、フィヨルド内の海水循環を促進させるような環境改善の構想について話をうかがった。ただし、これはまだ構想のみでそのための基礎実験の計画が検討されている段階である。

3.14 Ocean Climate a.s.

面談したSerigstad博士は、油の魚卵や仔稚魚に対する影響に関する現場調査とバイオアッセイに従事しておられ、これまでにニシン仔魚(体長40-50mm)は油のパッチを回避する能力が低いこと、成育ステージでは、摂餌開始期の仔魚に対する影響が最もクリティカルであり、後期仔魚期の後半になると影響は小さいことなどが見出されている。油の溶存成分についても同様の実験が行われている。
また、光を利用した集魚機能を持つライトトラップを水深30mに係留して、ビデオシステムにより魚類の行動生態の長期モニタリングを試みているそうで、将来的には油の影響のモニタリングにとどまらず養殖関連の調査研究にも応用したいと話しておられた。

3.15 GIGA a.s.

水深30mの海水を海面に浮かせたタンク(直径11.5m、容量1350m3)に継続的に汲み上げる装置(毎秒1250リットル)が開発されている。フィヨルドでは30m以深の水温や塩分は年間を通して比較的安定しているため、試験的に飼育したサケの成長は普通の生け簀のものよりも15%ほど良いとの結果が得られている。生物の飼育や養殖にこのシステムを広く役立てたいということで、日本での応用の可能性も検討されているようであったが、わが国の沿岸では30mという水深はいろんな意味で中途半端であり、このシステムを導入することに大きなメリットがあるかどうかは分からない。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION